M&Aにおける人気企業の実態
M&Aにおける人気企業は、業界動向、法規制の変更、経済市況、技術の進化などとともに移り変わっていきます。
しかし、ある程度不変的に人気がある企業の属性というものが存在します。
弊社もM&Aの仲介業務やアドバイサリー業務を行っていますが、M&A、特に中小規模のM&Aにおいては、およそ次のような属性を有する企業が買主の関心を集めやすいと考えられます。
スモール M&Aにおける人気企業の属性
- 財務的安全性が高い企業
- 固定費負担が小さい企業
- 損益分岐点が低く、コスト管理しやすい
⇒いわゆるコンサルティング会社などのサービス業が当てはまると思います。
- 業績やキャッシュフローが安定している企業
- 事業リスクが低い。ストック型ビジネス(一定期間ごとに定額収入が見込まれる事業)を営む業種に多い
⇒不動産賃貸業、レンタル業、ビルメンテナンス業などが挙げられます。しかし、コロナの影響で、これらの業種の今後は先行きが不透明になっています。
- 借入金が少なく自己資本比率が高いため、事業の安全性が高い
- 独自の強みを有する企業
- 競争上の優位性があるため、同業他社に比べて相対的に事業リスクが低かったり、成長性が高い場合がある
⇒財務的に安定している。企業としての独自の技術がある企業は、非常に人気があります。
- 老舗企業(例:伝統工芸や和菓子の製造販売)は業歴が長いと評価されやすい
- 特定の許認可を有している企業
- 事業運営にあたり許認可が必要であるが、その新規取得が困難な場合がある
⇒このように参入障壁が高い企業も人気です。
- 単一事業のみ営んでいる企業
- 飲食業などのBtoC事業を行っている企業/li>
⇒事業リスクが把握しやすいという意味で人気の傾向があります。しかし、今回のコロナの影響で、飲食については、価格は下がる可能性があります。
人気企業を買収する場合のメリットとデメリット
以上のように、M&Aの人気企業を買収するメリットについては、以下の通りです。
事業リスクが低い企業が多いので、買収後も安定した経営が可能であること、また再売却しやすいことが挙げられます。
デメリットとしては、人気があるため、買主が群がり、そもそもM&Aプロセスまで持ち込むことさえ難しい場合があること、取引金額が高騰する可能性が高いことが挙げられます。
M&Aにおける不人気企業と穴場企業
スモール M&Aにおける買収対象として不人気企業といえるのは、人気企業の逆です。
しかし、一見不人気企業に見えても、次のような場合は、買主から買収対象として十分検討される可能性があります。
1)買主にとって貴重な経営資源を有している場合
例えば、買主が新規事業に進出したい場合、設備、経営ノウハウ、経験値の高い社員などの経営資源を有していると、自力で進出する場合と比較して事業リスクを大幅に引き下げることが可能です。
2)複数の事業を営んでいるが、そのうち特定の事業が収益性が高い場合
買主のニーズとマッチすると、事業譲渡などのスキームを活用することによって、当該事業のみ切り離して売却することが可能です。
3)人余りの状態になっている場合
事業よりもヒトという経営資源に焦点を当てた買収の場合があります。
買主が著しい人手不足で収益機会を逃している場合などに適します。IT企業におけるエンジニアは、まさにそうです。